すごいですね。◇◆ 北野武さん祝辞全文「映画、身体のこと…不思議な感動」 陛下即位30周年式典 ◆◇
天皇陛下の御即位30年を祝う祭典「感謝の集い」が10日、東京・隼町の国立劇場で開催され、各界の代表として映画監督の北野武さんが祝辞を述べた。 北野さんは母親とともに天皇、皇后両陛下のご成婚パレードを見学した思い出や自身が監督した映画に関するエピソードを披露した。祝辞は以下の通り。◇
《壇上に上がった北野さんは一礼する際にマイクに頭をぶつけたり、祝辞の冒頭部分を逆さまに読んだりして会場の笑いを誘った後、祝辞を述べはじめた》
お祝いの言葉。天皇皇后両陛下におかれましては、ご即位から30年の長きにわたり、国民の安寧と幸せ、世界の平和を祈り、国民に寄り添っていただき、深く感謝いたします。 私は、ちょうど60年前の今日、当時12歳だったその日、母に連れられて日の丸の旗を持ち、大勢の群衆の中にいました。 波立つように遠くの方から歓声が聞こえ、旗が振られ、お二人が乗った馬車が近づいてくるのがわかりました。 母は私の頭を押さえ、「頭を下げろ、決して上げるんじゃない」。 ボコボコ殴りながら、「バチが当たるぞ」と言いました。
私は母の言うとおり、見たい気持ちを抑え、頭を下げていました。 そうしないと、バチが当たって、急におじいさんになっていたり、石になってしまうのではないかと思ったからです。 そういうわけで、お姿を拝見することはかないませんでしたが、お二人が目の前を通り過ぎていくのははっきりと感じることができました。
私が初めて両陛下のお姿と接したのは、平成28年のお茶会の時でした。 なぜか呼ばれた私に、両陛下は「交通事故の体の具合はどうですか。 あなたの監督した映画を見ています。 どうかお体を気をつけてください。 がんばってください」と声をかけていただきました。 このとき、両陛下が私の映画のことや、体のことまで知っていたんだと驚き、不思議な感動に包まれました。 ただ今考えてみれば、両陛下がごらんになった映画が、不届き者を2人も出した「アウトレイジ3」でないことを祈るばかりです。
また、お土産でいただいた銀のケースに入っているコンペイトーは、今やわが家の家宝になっており、訪ねてきた友人に、ひとつ800円で売っております。 5月からは元号が令和に変わります。 私がかつていたオフィス北野も新社長につまみ枝豆を迎え、社名を変えて「オフィス冷遇」にして、タレントには厳しく当たり、変な情をかけないことと決めました。
私は自分が司会を務めた番組で、私たちがニュースなどで目にする公務以外にも陛下は1月1日の四方拝をはじめ、毎日のように国民のために儀式や祈りをささげ、多忙な毎日を過ごされていることを知りました。 皇后陛下におかれましては「皇室は祈りでありたい」とおっしゃいました。 お言葉の通り、両陛下は私たちのために日々祈り、寄り添ってくださっていました。 私は感激するとともに、今感謝の気持ちでいっぱいです。
平成は平和な時代であった一方、災害が次々日本を襲った時代でもあります。 そのたびにニュースには天皇、皇后両陛下が被災地をご訪問され、被災者に寄り添う姿が映し出されました。 平成28年8月、陛下は次のように述べられております。「私はこれまで、天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えてきました」。国民の近くにいらっしゃり、祈る存在であること。そのお姿に私たちは救われ、勇気と感動をいただきました。
改めて平成という時代に感謝いたします。 私たち国民に寄り添っていただける天皇皇后両陛下のいらっしゃる日本という国に生を受けたことを幸せに思います。 ありがとうございました。--- 産経ニュース(2019.4.10)より 抜粋 ---