要はソメイヨシノは済州島の王桜(エイシュウザクラ)とは別物っでことですね。◇◆ ‘染井吉野’など、サクラ種間雑種の親種の組み合わせによる正しい学名を確立 ◆◇ポイント
● 4つの種間雑種の学名を、エドヒガン等の親種の組み合わせで整理しました。 ● Cerasus × yedoensis という学名は、エドヒガンとオオシマザクラの種間雑種名として用いるべ きことを示しました。 ● 韓国済州島のエイシュウザクラは、‘染井吉野’と異なり、エドヒガンとオオヤマザクラの種間雑種(C. × nudiflora)であることを明らかにしました。
概要
国立研究開発法人森林総合研究所(以下「森林総研」という)は、岡山理科大学と共同で、サクラの種間雑種について、形態や遺伝情報に基づく最新の知見を踏まえて分類体系を再検討し、正しい学名を整理しました。
栽培品種の‘染井吉野’は、エドヒガンとオオシマザクラの雑種に由来するひとつのクローンであることが明らかにされています。 その学名は、エドヒガンとオオシマザクラの雑種であることを示すCerasus × yedoensisと栽培品種名の‘Somei-yoshino’とで、Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’と表記されます(以下では、CerasusをC. と略記します)。 しかし、親種の組み合わせが異なるサクラに対しても、形態が似ていることからC. yedoensisの学名が用いられることがあり、サクラの分類に誤解や混乱が見られました。
形態や分子遺伝情報に基づいた最新の成果を踏まえて分類学上有効な学名を検討した結果、C. × yedoensisの学名はエドヒガンとオオシマザクラの種間雑種に限って適用すべきことを明らかにしました。 一方、エドヒガンとヤマザクラの種間雑種にはC. × sacra(モチヅキザクラ)、エドヒガンとカスミザクラの種間雑種にはC. × kashioensis(カシオザクラ)の学名が適用されることを明らかにしました。 済州島産のエイシュウザクラは、C.yedoensisの変種として扱われることがあり、‘染井吉野’の起源説も唱えられていますが、C. × yedoensisとは親種の組み合わせが異なるエドヒガンとオオヤマザクラの種間雑種C. × nudifloraとして区別され、‘染井吉野’とは系統が異なることがわかりました。本研究成果は、2016年12月22日にTaxon誌でオンライン公開されました。
背景
バラ科サクラ属(Cerasus)の樹木は、日本に9種が自生するほか、数多くの栽培品種があります。 中でも‘染井吉野’は、全国に植栽され日本を代表する栽培品種です。 しかし、サクラ類について、国際的に広く受け入れられている分類体系はありませんでした。 このため、韓国の済州島産のエイシュウザクラが‘染井吉野’の起源とする説が示されるなど、サクラの分類に誤解や混乱が見られます。 そこで‘染井吉野’に関連する種間雑種の分類体系について、形態学や集団遺伝学、分子系統学の最新の知見を基に検討しました。
内容
‘染井吉野’および関連するサクラの学名について、記載論文およびタイプ標本(学名の基準となる標本)をもとに分類を検討しました。 これまでタイプ標本が指定されていない学名には、新たにレクトタイプ(選定基準資料)やネオタイプ(新基準資料)を指定しました。 次にタイプ標本、あるいはタイプ標本が採取された原木からクローン増殖された個体を用いて形態観察および核DNAの分析をおこない、その親種について検討しました。 この結果、分析対象としたサクラは、いずれもエドヒガンと4種のサクラ(ヤマザクラ・カスミザクラ・オオヤマザクラ・オオシマザクラ)との種間雑種と認識されました。 これらの種間雑種には、それぞれC. × sacra(モチヅキザクラ)、C. × kashioensis(カシオザクラ)、C. × nudiflora(エイシュウザクラ)、C. × yedoensis という学名を適用するべきことが明らかになりました。 韓国済州島のエイシュウザクラは、これまでC. yedoensis の変種として扱われ、‘染井吉野’の起源とする説が唱えられてきました。 しかしエイシュウザクラは、エドヒガンとオオヤマザクラの種間雑種のC. × nudiflora であり、‘染井吉野’が含まれるエドヒガンとオオシマザクラの種間雑種とは親種の組み合わせが異なることを明らかにしました。
今後の展開
生物について、正しく認識し、他者にも正確に伝えるためには、同じ生物に同じ名前を用いるべきであり、国際的に通用する学名をまとめた分類体系が必要です。 しかし、これまでサクラの種間雑種は、形態から的確に分類することが難しく、さまざまな主張がありました。本論文で4 つの種間雑種の学名とその親種の組み合わせが明確に示され、混乱していた分類体系が整理されました。 さらにこの分類体系が国際的に認められたことで、サクラの分類について正しい理解が進むことが期待されます。--- 国立研究開発法人森林総合研究所 H/P(2017/01/18)より 抜粋 ---