まあ・・・◇◆ 韓国国防部と統一部の「合同うそ」 ◆◇
6・25戦争(朝鮮戦争)当時、米国のマッカーサー将軍が軍の幹部らを集め「作戦に失敗した指揮官は許すことができても、警戒に失敗した指揮官は許すわけにはいかない」と語ったという。 軍隊の歴史に長く残しておくべき名言中の名言だ。 兵役経験のある男性なら兵役の際に同じ言葉を何度も聞かされたはずだ。
「作戦に失敗した場合は許せるが、警戒に失敗したら許されない」という言葉は、2019年6月に韓国の東海岸で発生した事件を事前に予見したかのような教訓だ。 韓国軍指揮官の作戦能力が敵よりも劣っていれば、あるいは韓国軍の兵力や武器が敵よりも少なければ、戦闘で敗れることもあり得る。 しかし警戒に関しては話は別だ。 警戒が破られたというのは、要するに目を閉じて寝ていたことを意味する。 警戒が破られるのは能力ではなく、忠誠心や軍としての精神状態に問題があったという意味だ。 言い換えれば後方に待機する韓国国民が100パーセント無防備状態に置かれていたことを意味する。
北朝鮮住民4人を乗せて咸鏡北道鏡城を出港した小さな漁船が、何の制止も受けることなく軍事境界線を越え、ヨットや遊覧船が入港でもするかのように江原道の三陟港に停泊した。 これだけでも担当の韓国軍指揮官らは2等兵への降格を覚悟すべき重大問題だ。 なぜか。前方が破られていたことを意味するからだ。 ところが問題が起こってから韓国国防部と統一部(いずれも省に相当)は国民とメディアにうそをつき続けた。 それを一つずつ見てみよう。
まず国防部は当初「海洋警察から『防波堤で(北朝鮮の木造漁船を)確保した』との報告を受けた」 「確保した」 「報告を受けた」などと伝えたが、この言葉は相手を完全に制圧したという意味だ。 しかしこれもうそだった。 翌日には「北朝鮮の木造船が三陟港防波堤埠頭(ふとう)の先端に(自力で)接岸した」という内容に変わった。 全く話にならない。 しかも韓国軍は当初「(北朝鮮の木造船が)流されてきた」と説明していた。 エンジンが故障した木造船が潮の流れに乗って漂流し、偶然三陟港に到達したかのようにごまかしたのだ。 もちろんこれもうそだ。 最終的に韓国軍は「(北朝鮮の木造船は)エンジンで動いていた」と再び説明を変えるしかなかった。
今回の事件における最大の物証となる船についてはどうだったか。 統一部は当初「北朝鮮の木造船を船長の同意を受けて廃棄した」と発表した。 ところが翌日に韓国軍は「東海第1艦隊が木造船を保管中」と明らかにした。 最初に船を廃棄したと聞いた瞬間、われわれは首をかしげた。 事件について調査し、韓国軍の穴を補強し、北朝鮮の事情を知り、その上で必要なら韓国の学生たちなどに見せ、後の世代が今の南北の現実を知る歴史的物証として永久保管しても足りないほど重要な資料になるはずだが、これを統一部は到着と同時に廃棄したと発表した。 なぜそうしたのか。
故・金大中(キム・デジュン)元大統領の妻、李姫鎬(イ・ヒホ)さんの葬儀に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が贈った花環は永久保存するが、北朝鮮住民が乗ってきた木造漁船は翌日に廃棄したということだ。 しかしこれも実は統一部によるうそだった。 だとすれば統一部はなぜ最初からうそをついたのか。 メディアが実際に船を見ようとするからだろうか。 あるいは船を実際に確認したメディアを通じてその写真が広がり、さらに「あんな船でどうやって北朝鮮から来られたのか」だとか「あの船でなぜ警戒が破られたのか」などと記者たちが質問すれば答えに窮すると考えたのだろう。 そしてその一連の流れが全て北朝鮮の気分を害すると考えた瞬間、統一部は何も考えず「廃棄した」と発表したのだろうか。
先週、仁川のある街中で住民がM16小銃を拾って通報するという事件が発生した。 調べてみると、首都軍需支援団所属の兵士が訓練を終えて車で移動中に紛失したものだった。 この問題でも多くの方々が心配した。 一つを見れば10が分かるという意味だ。 そのときも「われわれの軍隊は唐の国の軍隊になった」という皮肉交じりの声が聞かれた。 9・19南北軍事合意の影響なのか分からないが、今回東海岸で完全に穴があいたのを見ると、M16小銃紛失は単なる愛嬌(あいきょう)にすぎないものだった。
文大統領がスウェーデンで行った演説の中で「南北の平和を守るのは軍事力ではなく対話」と堂々と語るほどだから、60万人の兵士から今力が抜けているのも当然だろう。 金正恩氏はミサイル発射実験後「強力な力によってのみ、平和と安全が保障される」と述べた。 あまりにもひっくり返った世の中に住んでいるためか、一体誰が韓国の大統領なのか分からなくなるほどだ。 そのため国民は東海岸が突破された事件について、軍の最高責任者が誰か改めて問い直したいことだろう。--- 朝鮮日報日本語版(2019/06/21)より 抜粋 ---